一色淡生の全体面線点

思い付いたこと書く

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地下王国「ズーリカ」より

私はふとした思い付きで散髪の帰りにインコを一羽購入した。
ピーピー喧しいインコの存在は一人暮らしの寂しさを紛らわすのに丁度良く思われた。
煩いくらいがいい。
私は店で一番ぱたぱた動きまわるやつを買い上げ、帰宅し、改めてしげしげと観察した。
頭の悪そうな顔をしている。
賢いペットなんぞ存外であるから、その点は気に入った。
私は従順なものを見ると不安になるのだ。
従順なものは、いずれ復讐しにくる。
そう感じる。
だから私はこいつと喧嘩をするくらいがいいのだ。
ちょこんとインコの頭を小突いてやった。
こいつも災難な奴だ。

私は洗い場に置いたままの皿を片付けようと思い、腰をあげた。
その前にテレビを点けてやる。
馬鹿そうだから困難だろうが、言葉を覚えるかもしれない。
憎まれ口のひとつでも叩けるようになったらしめたものだ。
私は蛇口を捻って皿を洗い始めた。

皿洗い中、私は美容院のお兄さんのことを思い返した。
美容院はニコニコした商売人の顔と真剣な職人の顔を一度に観察できる貴重な空間である。
私は必ず髭剃りを注文して、薄目で観察している。
やはりこの時が一番キリッとした表情を見せる。
真剣な顔は男の方が魅力的だ。
女も悪くないが、女だと納得できてしまう。
まだまだ女性は不当に冷遇されるシーンに出会すことがあるだろうから、認められようと真剣になる気持ちが理解できる。
それは、他者を意識した真剣さだ。
第三者がいる。
しかし、男の真剣さはサシだ。
全く内容の知れない男女を見比べるとそのように見える。
親しくなれば、全く、逆だったりするのかも知れないが、見た目だけ取り上げれば私にはそのように感ぜられる。
主観で申し訳ないが、私の嗜好の問題なので主観で通させて頂く。

皿を洗いながら男子の真剣さの由縁を考えていると、テレビのノイズが二重に聞こえてきた。
「であるから、」「であるから、」
「なわけですね」「なわけですね」
「え~ところで」「え~ところで」
しまった。
もう言葉を覚えてしまったらしい。
馬鹿じゃなかった。このインコ。

購入前から人語を解していたのかもしれない。
インコは流暢に日本語を復唱していた。
私は手を拭いてインコに指を差し出した。
また小突くつもりだった。

がじり!

強かに指を噛まれた。
私はピーピー喧しく鳴いた。
その時、気づいた。

こ、言葉が話せない!?

テレビが一瞬で砂嵐になる。
ザーーーーーーーーーーーー、
私のチャンネルが地下王国ズーリカの邪精マーデモの毒電波を受信する。

地下王国ズーリカは大王キンデモが統治する多菌族国家である。
国民は全てなんらかの微生物であり、誰もが自分の領土を主張している菌界において珍しく共栄を目指している。
それは邪精マーデモという未知の鉱石が国内に潤沢な栄養を供給しているためだ。
しかし、マーデモは同時に毒電波を垂れ流している。
その電波を微生物が浴びると攻撃性は失われ、思考力を著しく損ない、享楽に耽るようになる。
地下王国ズーリカはその毒電波のため、自衛の手段を持たずとも、いつまでも領土を保ち続けている。
攻撃を仕掛けた微生物は忽ちボケてしまうのだ。

しかし、マーデモはある時を過ぎるとただの石に変じてしまう。
これは離れ離れの石同士がまだ解明されていない通信手段でもって独自のネットワークを構築しており、マーデモのデータを交代でロードしているためだ。
マーデモAが石に戻ると、どこかでただの石がマーデモBとなって、別の地下王国ズーリカがまた建国される。
前のズーリカは忽ち周囲の微生物によって侵され、あっという間に滅ぼされる。
ズーリカは土のイヨマンテかもしれない。
とにかく、このようにして人知れず微生物圏はバランスを保っているのであった。
強くなりすぎた微生物はマーデモの餌食になるのだ。

話を戻す。
マーデモの毒電波を人間が浴びるとどうなるか?
これは、実はまだはっきりとはわからない。
非常に個人差があるのだ。
しかし、どうやら私の場合、人語を失い、裏声でピーピーとしか喋れなくなるらしい。

私は仕方なく服を脱いで、鳥籠の中へ入った。

「FUCK!FUCK!」
「ピーピー!ピーピー!」

今ではこのインコだけが友達である。
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  1. 2012/05/16(水) 13:17:31|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

私はこれいいと思うわ。
  1. 2012/05/22(火) 19:21:56 |
  2. URL |
  3. スイッチ #kZORAJIY
  4. [ 編集 ]

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